行動的で好奇心旺盛な性格の愛犬の場合、家の中の階段を上り下りすることがあるかもしれません。階段の上り下りは、飼い主さんが思っている以上に、愛犬の体に負担がかかるものです。

この記事では、犬の階段の上り下りについて、犬にかかる負担や危険性、犬に階段を上らせないための対策方法について、解説していきます。

愛犬のケガや病気のリスクを回避するために、飼い主さんはできる対策をしていきましょう。

犬には階段の上り下りは負担？

階段の上り下りをする動作は、犬の足腰に負担がかかります。階段は人間の歩幅に合わせた設計になっており、4本足の犬が使用する造りになっていません。

犬が階段を上るときは、後ろ足で体を支える状態になり、下りるときには前足で踏ん張る前傾姿勢になるため、足腰に体全体の負荷がかかります。着地する際も、体に大きな衝撃があるため、ダメージがかなり大きいです。

元々犬は、猫のように高いところに登る習性がなく、平面で暮らしていました。足腰の柔軟性に欠け、衝撃に弱い犬の体は、階段の上り下りに対応した構造になっていません。

また、階段にはツルツルしたフローリングの床材を使用している場合が多いため、足元が滑りやすいです。勢いよく着地すると滑りが大きくなるため、股関節を痛めてしまう可能性があります。

犬は階段を上り下りしていることで、体に大きな負担をかけることになるのです。

階段に潜む危険性

犬が階段を使用する場合、次のような危険が潜んでいることを知っておきましょう。

椎間板ヘルニアになる危険

日常的に階段を上り下りしている犬は、椎間板ヘルニアの原因に繋がります。

幅が狭くて段差が続く階段は、犬が使う仕様になっていません。そのため、犬が階段を上り下りするときは、無理な姿勢を取ることになります。飼い主さんから見ると、問題なく上り下りしている様子でも、実際にはかなり腰に負担がかかっている状態です。

犬の椎間板ヘルニアは、下半身まひを起こす場合があります。特にヘルニア好発犬は、要注意です。

階段から落下する可能性

犬は階段を下りるときに、不安定でバランスを崩したり、足を滑らせたりして落下事故に繋がる可能性があります。

犬の体は、上半身が重い造りです。階段を降りる際は、重い頭部が下になるため、転ばないようにバランスを取りながら下りなくてはなりません。犬にとって階段は、危険であり恐怖を感じるものです。

階段は一度落ちてしまうと、階下まで転げ落ちてしまいます。落ちた衝撃で、骨折したり、内臓を痛めたりする場合もあるのです。

特に注意が必要な犬種

階段の上り下りに特に注意が必要なのが、胴長短足の小型犬です。他の犬種以上に、腰への負担が大きく、椎間板ヘルニアを発症するリスクが心配されます。

ミニチュア・ダックスフンド

ミニチュア・ダックスフンドは軟骨異栄養性犬種と呼ばれる犬種です。椎間板の変性の進行が速く、若いうちから発症しやすいのが特徴です。

弾力性を失った軟骨は衝撃などによるダメージを受けやすく、「ハンセンⅠ型椎間板ヘルニア」を起こしやすくなるとされています。

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ウェルッシュ・コーギー

ウェルッシュ・コーギーは、骨格の特性上、腰への負担がかかりやすいです。

ミニチュア・ダックスフンドと同様に、生まれつき軟骨がやや弱い犬種なので、急な方向転換や瞬間的に強い力が加わる際は、注意する必要があります。

犬種の持つ特性を理解しておくことで、椎間板ヘルニアの発症を防ぐことも可能です。

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階段が負担になっている場合に見られる症状

階段の上り下りが愛犬の体に負担になっていると、次のような症状が見られることがあります。

椎間板ヘルニアの症状

腰に負担がかかっていると、腰の痛みやまひなどの椎間板ヘルニアの症状が見られます。

• ・背中を触ると痛がる。
• ・抱っこを嫌がる。
• ・散歩のときに立ち止まることが多くなる。
• ・歩くときに足や爪をする音がする。

椎間板ヘルニアは、自然治癒することはなく、治療をしなければ悪化してしまいます。早期発見と早期治療が大切です。いつもと違う様子が見られたら、獣医師さんに診てもらいましょう。

骨折の症状

犬が階段からの落下により骨折してしまうことは、珍しいことではありません。飼い主さんが落ちた瞬間を見ていないと、気づかない場合も多いです。犬は動ける状態であれば動いてしまいますが、以下のような足を気にするようなしぐさが見られたら、骨折の疑いがあります。

• ・足を引きずる。
• ・足をかばうような動きをする。
• ・足を気にして舐める。
• ・抱っこを嫌がる。

様子がおかしい場合は、動物病院へ連れていってください。階段から落下したことが分かっている場合は、変わった様子がなくても、念のため診てもらいましょう。

階段の負担を減らす対策方法

犬が階段を使う際に、負担を減らすためにはどのような対策をすれば良いのでしょうか。

滑り止めマットを敷く

階段の滑り止め対策にマットを敷くのは、効果的な方法です。

階段の床材は、犬が滑りやすく、踏ん張りにくいものが多いです。滑り止めを敷くことで、階段からの落下防止や着地による体への負担を軽減できます。

犬の滑り止め用のグッズは色々な種類のものが販売されているので、チェックしてみてください。

犬の腰や股関節を痛めてしまうことを防ぐことにも繋がり、手軽に実践できるのが利点です。

ステップ階段やスロープの設置

階段の段差をなくすために、スロープを設置するのも有効です。

足腰にかかる負担を軽減し、ケガや椎間板ヘルニアの発症リスクを下げることができます。老化により足腰が弱くなった愛犬にもおすすめです。愛犬のために手作りのスロープを作ったり、リフォームしたりする飼い主さんも少なくありません。

スロープを設置するスペースがない場合は、ステップ階段をつけると、段差の高さを低くすることができます。

階段を使わせないための対策方法

犬にとって負担が大きい階段は、普段から使わせないよう徹底することも対策になります。思わぬ事故を予防でき、飼い主さんも安心です。

ゲートの設置

階段の上り口と下り口に侵入を阻止するためのゲートを設置すると良いです。

愛犬に階段を使わせないための、最も簡単で効果のある対策方法です。ペット用の他にベビー用もあり、機能や高さも様々なタイプのものがあります。壁固定タイプや突っ張りタイプ、置くだけタイプなど、愛犬や自宅に適したものを選ぶようにしてください。

留守番中は、愛犬が慣れているフロアで過ごしてもらいます。愛犬の行動範囲を決めて、1階と2階を行き来させないようにするのがポイントです。

行動範囲が狭くなると、ストレスを感じる場合があります。しっかり散歩の時間を取るなどして、発散させてあげることが大切です。

階段の上り下りを教えない

犬は段差が苦手なので、階段が初めての場合、自分から喜んで上り下りすることは少ないです。階段を前に、多くの犬は恐さや戸惑いを感じます。

ただし、一度階段を覚えてしまうと、自由に上り下りしてしまうかもしれません。まだ愛犬が階段を使用した経験がないのであれば、飼い主さんが階段の上り下りの仕方を教えないことです。階段の使い方を知らず、未経験のまま暮らすことで、愛犬の身の安全を確保できます。散歩中も、段差のある場所は避けるようにしてください。

まとめ

犬の体の構造上、階段の上り下りは、犬の足腰への負担が大きいです。犬が階段を使うことで、思わぬ事故や病気を発症するリスクが高まります。

気づかぬうちに落下して骨折していたり、腰に負荷がかかることで椎間板ヘルニアを発症したりする場合があります。気になる症状が見られるときは、動物病院で診てもらってください。

階段の負担を減らすために、滑り止めマット、ステップ階段やスロープを設置すると、段差の負担を軽減できます。さらに、普段から愛犬が階段を使えないようにゲートを設置するのも有効です。

愛犬がストレスなく、安全で快適に暮らせる環境作りをしていきましょう。