日本の気候に合った犬

ほんのひと昔前の日本では、犬は外で飼うものと思われていました。家の軒先に、大きくなく小さくもない普通の雑種犬が繋がれ、前足をそろえてのんびりとうたた寝している光景をよく見たものです。今日では輸入され日本に入って来た洋犬の方が、日本犬よりもはるかに多く飼育頭数を伸ばしています。しかし、犬は生まれ育った風土に合った体質・毛質を持っているので、夏は高温多湿、冬は寒く乾燥する日本の気候の中で、苦労している犬たちがいます。たとえば寒冷地出身の犬たちは、密集したダブルコートの被毛を持っているものが多く、夏の暑さには耐えられません。屋外飼いに向いている犬種というのは、四季折々の日本の気候によく対応でき、家族から離れた場所にいても問題のない、精神的に自立した犬種といえるでしょう。屋外での飼育に向いている犬種、それは長い間日本の風土の中で生き抜いてきた、日本犬ではないでしょうか。

秋田犬、柴犬、甲斐犬

よく知られている日本犬に、秋田犬、柴犬、甲斐犬があります。3犬種とも日本の天然記念物に指定された犬種です。秋田犬といえば、やっぱり忠犬ハチ公。主人を待ち続けた、献身的なハチ公の物語はハリウッドでも映画化され、海外でも人気な日本の代表犬です。大型犬で、警戒心は強いのですが、利口で穏やかで、冷静沈着。誇り高く、自分から他の犬にケンカを売ることはありませんし、身の程を知る犬ならば、秋田犬にケンカを売ることはないでしょう。柴犬も世界に誇る日本土着の犬。日本犬の中でもっとも飼育頭数の多い人気犬種です。小型ながら筋肉質で頑丈な体つき、きりっとした顔立ちに風格を感じます。厳しい環境の山岳地帯で猟犬として働いていた犬なので、非常に忍耐力があります。甲斐犬は甲斐虎とも呼ばれ、野性味を帯びた狩猟犬です。山梨県の南アルプス地方でイノシシやシカ猟に使われていました。今でも現役の狩猟犬がいます。他人には警戒心が強いのですが、飼い主には非常に忠実です。

屋外飼育で気をつけること

日本土着の犬なら、日本の風土気候によく適応していると思われますが、近年その気候が変わってきています。集中豪雨、最高気温の記録更新、記録的な大雪など、これまで経験したことのない異常気象が日本各地で起こっています。屋外で犬を飼育する場合は、夏の猛暑、極寒の冬にどう対処するのか考えておきましょう。密生したダブルコートを持つ犬は、冬の寒さには強いのですが、熱を逃がすことが苦手で、夏の暑さには弱いのです。うっかりすると、熱中症でぐったりと倒れていることもあります。犬を繋いで留守をしている場合は、集中豪雨でまわりに水が貯まってきても、鎖の長さの範囲でしか、犬は逃げることができません。設備の整った犬舎で飼育するのではない場合は、いろいろなシチュエーションを考えて、万一に備えてあげてくださいね。犬の居場所が外からの刺激の少ない、落ち着ける場所にあることも大切です。犬舎のすぐ近くを人や車が往来していると、犬は常に落ち着かず、ストレスを抱えてしまいます。犬が警戒心から吠えれば、よく吠えてうるさい犬と言われ、ご近所つきあいにも影響することがありますので、注意が必要です。

まとめ

犬は基本的にいつも家族の近くにいたい、と思うものです。自立心が強いと言われる犬たちでさえ、家族がそばにいると安心して、リラックスできます。ですから、屋外で犬を飼育する際は、たとえ外であっても、いつも家族を感じられる場所、ひとりぼっちの淋しさを感じなくてもいい場所、そして、夏の日差しや雨風が入り込まない安全な場所に置いてあげてくださいね。